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【コラム】愛犬の歯磨き完全ガイド|歯周病予防で健康長寿を目指そう

犬の歯磨きは、歯周病の予防に欠かせないケアのひとつです。歯周病は進行すると口腔内のトラブルだけでなく、心臓病や腎臓病など全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。特に7歳以上の犬では、約80%が歯周病にかかっているといわれており、決して珍しい病気ではありません。

また、麻酔をかけて詳しく検査を行った結果、歯周病の有病率が44~100%にも及ぶという報告もあります。見た目には問題がないように思えても、実際には多くの犬が歯周病を抱えている可能性が高いです。

「歯磨きの大切さは分かっているけれど、やり方が分からない」「愛犬が嫌がって歯磨きができない」とお悩みの飼い主様も多いのではないでしょうか。

今回は愛犬の歯磨きの重要性や正しい方法、歯磨き以外の予防策について詳しく解説します。

歯磨きをしないとどうなる?愛犬への影響を解説

歯磨きを怠ると、犬の口の中では歯垢が蓄積し、やがて歯石へと変化します。歯石がついたまま放置すると、歯周病へと進行し、以下のような段階を経て症状が悪化していきます。

 

<初期段階(歯肉炎)>

・歯茎が赤く腫れる
・口臭が強くなる
・歯石が少しずつ付着し始める

 

<中期段階(歯周炎)>

・歯茎の腫れが悪化し、出血することがある
・歯のぐらつきが見られる
・食事の際に痛みを感じるため、食べるスピードが遅くなる

 

<重度段階(進行性歯周病)>

・歯が抜け落ちる
・膿がたまり、顔が腫れることがある
・細菌が血流に乗り、心臓病や腎臓病を引き起こすことがある

 

特に、歯周病菌が血管を通じて全身に広がると、心臓弁膜症や腎機能の低下を引き起こし、寿命を縮めてしまう可能性があります。歯周病は「単なる口の病気」ではなく、全身の健康に深く関わる重大な疾患であるため、注意が必要です。

 

犬の歯磨きはいつから始めるべき?

犬の歯磨きは、できるだけ子犬のうちから始めるのが理想的です。子犬のうちに歯磨きに慣れさせておくことで、成犬になってからもスムーズにケアを続けることができます。乳歯が生え揃った生後3~4カ月頃から、歯や口に触れる練習を始めるとよいでしょう。

成犬から歯磨きを始める場合は、無理に歯ブラシを使おうとせず、まずは口を触ることから慣らしていくことが大切です。最初はガーゼを使って軽く歯をこするなど、徐々にステップアップすると受け入れやすくなります。

歯磨きの頻度は理想的には毎日が望ましいですが、最低でも週に2~3回は行うようにしましょう。特に食後は歯垢が付きやすいため、食後すぐに歯磨きをするのが最も効果的です。

 

正しい歯磨きの方法とコツを解説

①必要な道具を準備する

・犬用歯ブラシ(犬の口のサイズに合ったもの)
・犬用歯磨き粉(フッ素が含まれていないもの)
・ガーゼ(歯ブラシが苦手な犬用)

 

②歯磨きに慣れさせる

まずは、指で口元や歯に触れる練習をしましょう。短時間で終わらせ、できたら褒めることが大切です。

 

③ガーゼで歯を拭く

指にガーゼを巻き、歯の表面をやさしくこすります。歯ブラシに慣れていない犬には、この方法が効果的です。

 

④歯ブラシでブラッシング

前歯から奥歯へ、歯と歯茎の境目を優しく磨きます。強くこすらず、円を描くようにブラッシングすると効果的です。

 

⑤歯磨き後はご褒美を

歯磨きを嫌がらないように、ご褒美を与えたり、楽しい雰囲気で行ったりすることが大切です。

 

おすすめの歯磨きグッズとは

<犬用歯ブラシの選び方>

犬用の歯ブラシには、さまざまな種類があります。小型犬には小さめのヘッドがついたブラシが適しており、大型犬には大きめのヘッドがついたブラシが使いやすいです。また、指サックタイプの歯ブラシやガーゼもあり、細かい部分まで丁寧に磨くことができます。

 

<歯磨き粉の選び方>

歯磨き粉の選び方も重要です。犬用の歯磨き粉は、フッ素が含まれていないため、安全に使用できます。チキンフレーバーやミントフレーバーなど、愛犬が好む味の歯磨き粉を選ぶとよいでしょう。

 

<その他のデンタルケア用品>

デンタルジェルやガムなど、歯垢を除去するための補助用品も効果的です。

 

歯磨き以外の歯周病予防法

<定期的な歯石除去>

ご家庭での歯磨きだけでは、歯石を完全に除去することはできません。動物病院でのスケーリング(歯石除去)は、最低でも年に1回受けることをおすすめします。

 

<食事での予防>

デンタルケアフードや噛むことで歯垢を除去できるおやつを取り入れると、歯周病の予防に効果的です。

 

<獣医師による定期検診>

口腔内の健康状態を把握するため、定期的に動物病院での歯科検診を受けることが大切です。

 

まとめ

歯磨きは、愛犬の健康を守るために欠かせない習慣です。特に、歯周病は進行すると全身の健康にも悪影響を及ぼすため、できるだけ早くケアを始めることが大切です。

毎日の歯磨きが難しくても、週に数回でも継続することで、愛犬の口腔内の健康を保つことができます。また、動物病院での定期的な歯石除去や歯科検診を受けることで、さらに効果的に歯周病を予防することが可能です。

本記事を参考に、愛犬の健康を守るためのデンタルケアを実践していきましょう。

 

<参考文献>
・A review of the frequency and impact of periodontal disease in dogs.
C Wallis et al. J Small Anim Pract. 2020.
・Dog Owners’ Perspectives on Canine Dental Health—A Questionnaire Study in Sweden. Karolina Brunius Enlund, et al. Front. Vet. Sci. 2020.
・Silvan U, et al. Risk Factors Associated with Lifespan in Pet Dogs Evaluated in Primary Care Veterinary Hospitals. J Am Anim Hosp Assoc. 2019. 55(3)

 

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