コラム
【コラム】猫の目やに・目の汚れの原因と対策|自宅でのケア方法と受診の目安
「猫の目やにって、当たり前に出るものだと思っていた」という声を、飼い主様からよく耳にします。たしかに、猫は健康な状態や寝起きなどに少量の目やにが見られることがあります。
しかし、目やには単なる汚れではなく、体調の変化を知らせる「健康のバロメーター」でもあります。目のトラブルはもちろん、時には全身の不調が隠れていることもあるため、日頃から注意して観察することが大切です。
今回は猫の目やにについて、正常な状態と異常な状態の違い、考えられる原因、そして自宅でのケア方法や動物病院へ受診すべきタイミングなどを解説します。
猫の目やにの基本知識
通常の目やには量が少なく、透明または薄茶色〜茶褐色をしています。こうした目やには、目に付着したほこりや新陳代謝による分泌物であり、目頭に少し付着している程度であれば心配ありません。
しかし、以下のような目やにが見られる場合は注意が必要です。
・色が黄色や緑色に変化している
・粘度が強くドロッとしている
・目の周囲に大量に付着している
これらの症状が見られた場合、単なる汚れではなく、体の中で何らかの異常が起きている可能性があります。
異常な目やにのサインと受診のタイミング
猫の目やには、色や粘度によってある程度、原因を推測することができます。黄色や緑色の目やにの場合、ウイルスや細菌感染の可能性が高いです。
また、目やにの状態に加えて、以下のような症状が見られる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
・片目だけに目やにが出ている
・目やにの量が急に増えた
・数日〜1週間以上症状が続いている
・目をしょぼしょぼさせる、目をこする
・鼻水、くしゃみ、食欲不振などの他の症状がある
目やにの原因となる病気
猫の目やにの背景には、以下のような病気が関係している場合があります。
■感染症
<結膜炎>
ウイルスや細菌などの感染により、結膜(まぶたの裏側〜白目部分)に炎症が起こる状態です。充血やドロッとした目やにが見られます。
<角膜炎>
角膜(黒目の表面を覆う透明な膜)に炎症や傷ができる病気で、しみるような痛みを伴い、目を開けにくくなることがあります。
<上部気道感染症(猫風邪)>
猫ヘルペスウイルスなどのウイルス感染による病気で、いわゆる「猫風邪」の一種です。目やにに加えてくしゃみや鼻水などの症状も見られます。
■アレルギー性結膜炎
ハウスダストや花粉などのアレルゲンに反応して目に炎症が起きることがあります。毎年同じ季節に繰り返す場合や、室内環境を変えたタイミングで悪化する場合は、アレルギーの可能性があります。
■構造的な問題
<鼻涙管閉塞>
鼻涙管(目から鼻へ涙が流れるための細い管)が炎症や先天的な異常などによって閉塞した状態です。涙がまぶたからあふれて変色し、赤茶色の目やにが見られます。
<逆さまつげ>
通常、外に向かって生えるまつ毛が内側に生えることで、目の表面を刺激して炎症や涙、目やにが見られます。
これらの病気は、単独で発症することもあれば、複数の問題が重なって起きることもあります。自己判断は症状を悪化させる恐れがあるため、正確な診断のためには動物病院での受診が必要です。
診断方法
診察では、まず問診によって飼い主様から詳しい状況を伺います。その際、以下のような情報を獣医師に伝えることで、より正確な診断につながります。
・いつから症状が出ているか
・どちらの目に出ているか
・目やにの色や量の変化
・他の症状(くしゃみ・鼻水・元気がないなど)があるか
問診後、目やにの状態に応じて、以下の検査を実施します。
・スリットランプ検査:細い光を当てて目の表面や内部の状態を観察します。
・フルオレセイン染色:目の表面に色素を付けて、角膜に傷があるかを確認します。
・シルマー検査:涙の量を測定し、ドライアイなどの有無を調べます。
・細菌培養検査:目やにから菌を採取し、どのような細菌が関与しているかを分析します。
治療方法
治療は以下の症状に応じて、異なります。
<軽度の場合>
点眼薬や内服薬による治療を1~2週間行い、状態によっては1週間ごとの通院で経過を確認します。なお、処方された薬は、自己判断で中止せず、必ず獣医師の指示に従ってください。
<重度の場合>
点眼や内服では改善が見られない場合や、構造的な異常が原因となっている場合には、外科的処置を検討することもあります。手術の必要性については、診察や検査結果をもとに慎重に判断します。
ご自宅でできる目やにケア
目を清潔に保つためには、ご自宅で以下のようなケアを定期的に行いましょう。
<適切なケアの手順>
①まずは、清潔なガーゼやコットンを準備します。
②コットンをぬるま湯で湿らせて、目の内側から外側に向かって優しく拭き取ります。
③無理にこすらず、目やにをふやかしてから取り除くようにします。
※注意点
水道水で目を直接洗う、人用の目薬を使う、といった方法は目に刺激を与えてしまうため、避けましょう。
<目薬の差し方のコツ>
動物病院で目薬を処方された場合、猫のストレスに配慮しながら以下の手順で点眼を行いましょう。
①利き手に目薬を持ち、反対の手で猫の下あごを支えます。
②上まぶたを軽く持ち上げ、目の上から点眼します。
③猫の背中側から、体を包み込むような体勢で行うとスムーズです。
<ケア時に観察すべきポイント>
目のケアを行う際は、以下の点を注意深く観察しましょう。
・目の腫れ
・充血
・目やにの色や量の変化
・涙の量が増えていないか
症状が進行しているようであれば、自己判断せずにすぐに動物病院を受診することが大切です。
まとめ
目やには多くの猫に見られる身近な症状ですが、見逃してはいけない病気のサインであることも少なくありません。そのため、いつもと違うと感じたときには、早めに動物病院を受診しましょう。
病院での適切な診断と治療、日々のケアの積み重ねが、猫の目の健康を守る大きな力になります。愛猫が快適な毎日を過ごせるように、見守っていきましょう。
当院では、猫の性格やストレスに配慮しながら、できるだけ負担の少ない診察を心がけています。小さな変化でも「いつもと違うかも」と感じたら、お気軽にご相談ください。
■関連する記事はこちらから
川崎市中原区の「馬場動物病院」
044-777-1271
当院についてはこちらから